懺悔

します。ごめんなさい。

 コンサート録音の編集で、今回はどうしても手術せねばならぬ部分が2箇所ありました。明らかに「問題あり」と判断される大きくて耳障りなノイズ音が2つ、片方は会場からの環境ノイズ、もう片方は携帯電話の電波による信号ノイズでした。

 いま使っている機材はどれも業務用には程遠いもので、特にケーブル類は3軸(キャノン)タイプなんか持ってないので、もともと電波ノイズには弱いのです。2ヶ月に1回くらいしか定期的には使わないものを(しかもあと何回使うか分からないものを)、個人負担で、業務用を買うのはしんどいので、これは勘弁してください。
 さらに編集もフリーソフトで頑張ってます。コンサート録音は基本的に全て”Kristal”を使っていますが、やはりSteinberg岩山さんとこの”Cubase”とか”NUENDO”のような業務用ソフトの能力には程遠いものがあります。4万4千分の1秒単位の編集はできないし、また録音が2chとはいえ、ミキサー・オートメーションがないのは、それなりにしんどいです。あと懐かしの、タイムラインから上下にマウス・ドラッグするだけで分・時間単位から1サンプル( 1/44,100秒)単位まで一気に拡大・縮小できる機能、あれほんと便利でしたよ。

 そんな中での大手術でした。いわば臓器移植でした。直接ノイズを消せないので、その部分を他の録音に差し替える作業が必要でした。

 環境ノイズの方は、良かったんです。本番直前の練習を偶然にも試し録りしてて、会場もマイキングもほぼ本番通りだから、全く違和感なく差し替えられたんです。誰が聞いても気付かないくらい完璧な手術でした。編集環境を踏まえずとも、もう申し分ないと思います。

 でも問題は信号ノイズの方でした。そっちはゲネプロの録音しかなく、しかも音質や残響をいじったり丁寧に編集してしまった後のデータしか残ってなくて、明らかに響きが違う。
 それでも最良を目指して手術を始めたのですが、しかし曲目と演奏の都合上どうしても2つの録音(スピードや音色、バラつきなど)が一致せず、切り継ぎの場所選びがとんでもなく難しい。
 さらに音質の違うもの同士をつなげるから、どうしてもゆっくりクロス・フェードする必要があるのは分かってもらえるでしょうか。けれどミキサー・オートメーションがないから、2つのデータ自体のフェード・アウト/インの調整で合わせるしかない。だが困ったことにKristalのフェードは若干のクセがあるので(カーブの調整もできません)、どうしても違和感が残ってしまう。

 何十回もタイミングとフェードを調整して結構ねばったんですが、残念ながら、手術痕が残ってしまいました。非常にくやしいですが、無理でした。「耳障り」が「違和感」だけになったんだから、編集前よりは良くなったと思うんです。でも非常に非常にくやしいです。そして、ごめんなさい。

 せっかくの機会なので改めて言ってみましょうか。

 …お願いですから、本番中は携帯電話の「電源を」お切りください。
 マナーモードじゃ不十分なんです。