ASAGAO,
長らくご無沙汰しておりました。久々の記事ですね。
先週末、横浜のBankART 1929という場所で「ASAGAO,」という創作能楽の舞台がありまして、手伝いに行ってました。右写真のBankART 1929は、以前は銀行(!)だったものを内部を改修して、貸しホールとして利用できるようにしたものです。建築物としての価値があるということで、(当たり前の事ですが)壁や床、内部の柱に傷を付けちゃぁいけないと、設営・撤去作業はなかなか気を使いましたが、管理している方々のおかげでとても使いやすい場所でした。
内部はこんな風景。クリックすると拡大します。ちなみに舞台も客席も、こちらで設置したものです。
昨年9月末にコンサートをやったizuruによる制作で、日本古典芸能由来の能楽、西洋クラシック音楽由来の現代音楽の融合を試みた舞台でした。舞台演出にはコンピュータ制御のLED照明や、ポリアミド製チューブを素材とした巨大なオブジェを使っていました。
公演2日目は幸か不幸か雪。舞台も役者も真っ白だったので、そういう意味では万歳、でしょうか。右の写真にはランドマークタワーが写ってるんですが、もはや写っていませんね。いやー搬入口付近はめっちゃ寒かったです。
ひょんないきさつで、今回はNHK-TSの方々が取材に来てくれまして、3D Hi-Visionの撮影を行っていきました。写真のは専用のカメラ。要するに、中に2台のHi-Visionカメラが入っていて、左右の目の役割をするわけです。2カメ撮影だから、うわぁ、4台の業務用Hi-Vision…
一度NTSにお邪魔してデモを見せて頂いたんですが、偏光レンズ付きメガネをかけなきゃいけないものの、映像の立体感は確かに良かったです。サンプル映像の珊瑚礁が「魚クン」の案内だったのも印象的でした(笑)。
さて肝心の内容はどうだったのでしょうか。私の個人的な感想になりますが、「見た目はカッコいい」。照明やオブジェを使った演出はたしかにカッコいいものでした。そう、ヴィジュアル・デザインは良。ただ、時間軸を加味した上での構成を考えると、まだまだ検討が必要だったと思います。映像映りはいいが、芝居を観ていると、たるい、もしくは疲れる、という感じでした。
ただし今回一番しっくりこなかったのが、終わった後スタッフ同士が「この舞台が出来てよかったね!」と言い合える関係であれたかどうか、という点。ずっと裏で誰に感謝されるでもない雑用をこなしている制作チームや、悪い段取りに振り回された役者・奏者たちは、果たして良い気持ちで舞台を終えられたんだろうかと、そういう点が心配でならないです。仕事として十分な給与でもあるならいいですが、ほとんどボランティア精神で参加してくれている人達への配慮は、はたして適切だったのでしょうか。
加えて、本番3日前にはじめて芝居の様子を見たであろう外部から来た舞台監督さんが、誰よりも全体の進行を把握していたというのは、舞台監督さんへの尊敬の念とともに、中心メンバーに対する舞台を創る人間としての不信感を抱かざるをえませんよね。私は練習にも何度か顔を出してましたが、会場入りしてなお続く段取りの悪さには、横で見ていて残念な気持ちでした。
やっぱり、「他の人達が大切な時間を自分に捧げてくれて、自分がやりたいことに付き合ってくれている」事への感謝の気持ちって、ものを創ったりプロジェクトを動かす人物には絶対に必要だと思います。
それにしてもあの舞台監督さん、さすがだわ。仕込み・本番の段取りのみならず、かなり限られた時間での(しかも相当ややこしい)撤収作業まで段取れるとは。本来の搬出トラックに加えて、撮影・録音の中継車まで来ていたから、正直とても心配でした。無事に終わったのは、舞監さんの力が大きいと思います、ほんと。こっちの力量が完全に見透かされているようで、しゃべるときちょっと緊張してしまいましたが(笑)。
役者、奏者、スタッフの皆様、ほんとお疲れさまでした。