なやむこと
悩ましいですよね、お金って。ドイツに来てから「作品」と「対価」の問題が、非常にリアルに感じられるんです。その、私の音楽のCDが欲しいと言ってくれる人が時々いるんですよ。嬉しいことなんですが、いやほんと、ほんと嬉しいことなんですが、これが悩みの種なんです。またこれがね、「いくらかかる?」って聞いてくれたらまだラクなんだけど、手にした瞬間に喜んでる姿を前にすると、○ユーロお願い!なんて言いにくいわけです。もらうにしたって、いくらもらっていいか悩むわけです。
というわけで今回は、最近その活動が活発な、脳内会議のある委員会の様子を中継してみようと思います。
-脳内会議中継/自作品CD価格設定委員会-
作曲屋: 私が思うにですね、制作時の苦労と、実際の作品クオリティを加味して考えると、一枚千円くらいでも妥当だと思うのですよ。作る側の責任の対価として、お金をもらうのは適当であると思います。私はそれくらいのプライドを持ってるし、それくらいの責任を背負っているつもりでいます。
演奏屋: いやしかしですね、特にコンサートのなんかの生録音は「ベストの演奏」とは言えないと思うんです。もちろん「その時」のベストではありましたが… それを考えると、千円は高いんではないでしょうか。
作曲屋: それも含めて、実際のところ他人にとって「売れる(買いたくなる)」作品なのかどうかを確かめたい、という気持ちもあるんです。
音響屋: 私の誇りにかけて、質の悪い録音を売るのはどうかと思うんですよ。私だって素人レベルの音質は把握しているつもりです。ですが、特にコンサートの録音はアマチュア・レベルにしても悪いと思うのです。もちろん用意できた録音環境の問題ではあるんですが…
作曲屋: 私は、音質が少々悪くても、それ以上にいい曲に作ったつもりです!
CDデザイナー: でもCD自体がコレじゃないですか。CD-R丸出しですよ? 簡単なジャケットくらい自分で作れるじゃないですか。頑張ればレーベルだって自作できますよ? たしかに今はプリンタひとつないですが… しかし、こんなCD-Rバリバリのものを売っていいんでしょうか? 売るんなら、やはり実費程度なんじゃないでしょうか?
総合プロデューサー: しかしね、やはり著作物への対価は支払われるべきものだと思うのですよ。それに、生活費だって無限にあるわけではないんだよ? この先だって、お金を稼がずにいるわけにはいかないんだよ? どっちみち僅かな収入でも、それを考える必要もあるんじゃないですか? 慈善活動ばかりできる身分かどうかを考えてみなさい。まぁ千円は高いとしても、五百円程度が適当なんではないでしょうか。
WEBデザイナー: え!? でも既にWEB上で無料公開始めてますよ?!
総合プロデューサー: WEBの位置づけとして、そうであるべきなんです。より多くの人に知ってもらうこと、より多くの人から感想をもらえること、これらが達成されれるために無料である必要があるのだよ。
音響屋: ですが… いくら80kbpsで圧縮しているとはいえ、気にならない人には気にならない音質差ではあるんですよ。
総合プロデューサー: わざわざCDを買ってくれた人との差別化ができない、というわけか…
HISRAC(彦音楽著作権協会)派遣社員: ところで、中には他の人が録音や編集したのも入ってますよね? 他の人と演奏したのも入ってますよね? 配当金はどうしましょうか?
一同: う~ん・・・
(続・・・かないで欲しい・・・)
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…はい。ということで非常に悩んでいます。結局のところ、その時々で代金をもらったりもらってなかったりという一番悪い状態になってます。嬉しい悩みじゃないかと言われれば、まぁそうなのかもしれませんが、でも困ってるんですよ。ほんとに。どうしたらいいんでしょうか…
P.S.
ってか、音制作ってなんなんでしょうね。陶芸とかなら、まだ「物」がありますけど、作曲なんて、結局作ってるのは空気の振動プログラムですよ? 質量すらありません。