Waldprojekt

 エンゲンに雪が降りました。ようやく冬らしい姿を見られて嬉しいな、と思ったのですが、もう3月も下旬だし、もうすぐ夏時間に切り替わる時期なんですよね。

 さてこのたび、我らがエースのトラクターに率いられ、希望者10人で森に行ってきました。久々の森での作業なので、楽しみにしてました。

 今回の作業は、死んでいる木を切り倒し、細いものはその場で燃やし、太いものは薪用として持ち帰る、という内容。途中に昼食を挟んでの、一日かけての作業です。切り倒した本数は数十本に及びます。

 死んだ木というのは乾燥しているので、どんどん燃えていきます。火は最大3mの高さまでいきました。近くにいるだけで、かなり熱かったです。高熱では衣服が皮膚にこびりつくことがある、と聞いたことがありましたが、今ふと手元を見ると、軍手の後が少し焼き付いています(汗)。
 3mの火でこんなに熱いのに、かつて9mの巨大な火を使ったことを思い出して、う~ん、大学では無茶をやったなぁ、と。

 仕事の間にお楽しみ、食事です。さすがに3mの火じゃ強すぎるので、別に竈をくべての料理。野菜たっぷりスープと、焼きBratwurst(白ソーセージ)。こっちで白ソーセージ食べたことある人は分かると思いますが、美味いんですよね、ほんとに。特に太めのヤツ。しかも今回は炭火焼です。グリルの焼き目が、最高に美味しそうで(笑)。

 太めの木は持ち帰りです。今回の収穫を荷台に載せて、エンゲンへと帰ってゆく… 通りで出会う人々が毎度毎度おどろいた顔で眺めていくのは、とても愉快でした。
 あ、ちなみに車はもう一台あって、人間はちゃんとそっちに乗りましたからね。

 さて今回のこの仕事、ちょっと疑問に思ったことがありました。薪として持って帰るためならともかく、なぜ木をたくさん切り倒して、しかもその場で燃やしてしまうのか? エネルギーの無駄遣いというか、それこそ自然破壊のように見えるわけです。

 詳しく聞いて正解でした。とても興味深い答えが返ってきました。

 切り倒した木は全て、死んでいる木。死んだ木には虫が付きやすい。木の中で虫が繁殖していくと、じきに生きている木にも広がっていき、いずれ森全体が虫に食われていく…
 それを防ぐために、死んだ木を燃やして虫を駆除する必要がある。もちろん持って帰って薪にしてもいいけれど、枝打ちや裁断、運搬などの仕事量を考えると、太い木だけ持ち帰り、細い木はその場で燃やすのが適当、というだけのこと。

 もしやと思って聞いてみました。そして、やはり。

 ”Ohne Menschen geht es nicht.” 
 「人間なしでは成り立たない。」

 今回このことが一番に興味深かったです。たとえば蜂や他の虫がいないと植物の受精も成り立たないように、今の森には人間の手が必要である… かなりハッとする観点でした。

「よく自然っていうと、人の手が入っていないもの、とか想像してしまうけれど、本当は人間が手を加えてやる必要があるんだ。酸性雨や大気汚染などで森は弱ってしまった。だからそれを補う処置をしてやる必要がある。もちろん人間がまるっきりいなければ、それはそれで機能しているんだろうけどね…」

 おもしろい。これは非常に興味深い。